4コマ宇治拾遺物語

  • 鹿法師のこと

    原題「龍門聖鹿にかはらんとす」。

    今回は徳の高いお坊さんです。しかし、やっていることは異様かつ過激。矢を射ようか射るまいか迷った末、ギリギリで思いとどまるのがスリリングです。

    仏教には不殺生戒があり、殺生を禁じています。これを破ると、死後、より悪い世界に生まれ変わってしまいます。職業上、直接的な殺生を多くする漁師や猟師は、自然、地獄に落ちると考えられていました。

    理不尽。

    現代の感覚だと「それで皆が狩猟をやめたらどうなっちゃうんだ」と言いたくなりますが、こういうことがどう受け止められていたのか……。

  • 陰茎検知のこと

    原題「中納言師時法師の玉茎検知の事」。

    宇治拾遺屈指の最低なエピソード。前回同様、施しを得ようとする僧の話ですが、公衆に股間を晒すという驚愕の手法を使います。

    インチキを暴くためとはいえ、不審者の股間を少年にさすらせるのは「いいのか…?」という感が拭えない。

    本文に「美少年」とはありませんが、「ふくらかなる手して上げ降ろしさする」などと描写が艶めかしいので、美少年を連想させます。

  • トレパネーション法師のこと

    原題「隨求陀羅尼を額に籠める法師の事」。

    元の話がまんま4コマです。漫才みたいな切り返し。この後、「周りが笑っているスキに逃げた」とあります。

    宇治拾遺物語には、インチキ法師やおかしな僧が度々出てきます。こうしたエピソードの多くは「私度僧」の活動を描いてるようです。私度僧とは、政府の公認を受けていない僧です。その中には、民衆を救うため敢えて僧になった者もいれば、税を逃れるため僧のまねをしている者もいました。

    私度僧は非公認のため、給料はありません。なので、ホラや大道芸で人を集め、施しを得ようとする者もいたのだと思われます。

  • 夢解き奥さんのこと

    原題「伴大納言の事」。

    実在の人物・伴善男は一介の従者でしたが、のちに出世し大納言となります。が、「応天門の変」にて失脚し、流罪となります。その運命があらかじめ予告されていた……というお話ですが、「そんなこと言われても。じゃあどうすればよかったのか」という理不尽感が何とも言えません。

    夢の話を「誰に/どう話すかが重要」という発想は現代にも残っていますね。「初夢は人に話してはいけない」「いや逆に話すべき」とか、「正夢は話すと嘘になる」云々。

  • 鬼に瘤取られること

    原題「鬼に瘤取らるる事」。

    いわゆる「瘤取り爺さん」です。

    最初の爺さんが、「瘤を質にする」と言われてとっさに惜しんでみせるのがなかなか狡猾。鬼との約束を守る気は無いことが分かる。

    二人目の爺さんは、別に悪人という訳でもないのでちょっと可哀想です。

  • ひらたけ法師のこと

    原題「丹波国篠村に平茸の生ふる事」。

    唐突な平茸ディス。しかも「不良法師は平茸に生まれ変わる」という驚愕の事実。

    仮にそうなのだとしても、平茸として役に立っていたのだから、「食べない方が良い」という結論はどうなのか……。釈然としない。

    不気味な味わいのあるエピソードです。

  • 事後に読経すること

    原題「道命和泉式部の許に於て経を読み五條道祖神聴聞する事」。

    事後という言葉はありませんが、「和泉式部のところに通って、寝てたら目が覚めたので経を読んだ」とあるので、そういう情景だと思われます。

    初っ端から、宇治拾遺物語らしさが炸裂したお話。エロ要素、風刺(聖人や権力者を笑う)、当時の宗教観(神仏はそこここにいて、序列もあり、一概に有難い訳ではない)、全体的に釈然としない感じ……。

  • はじめに


    宇治拾遺物語の4コマ漫画訳をやっていきます。

    宇治拾遺物語とは?

    鎌倉時代の説話集で、古文の教科書でおなじみ「稚児のそら寝」の原典です。「こぶとり爺さん」等、よく知られた昔話も入っています。
    説話というのは「仏教を勧める話」ですが、宇治拾遺物語はあまり説話っぽくなく、笑える話・怪奇が多いです。全体的におおらかで、エロや脱力する話が多い。シンプルに面白いのに加えて、当時の考え方や習慣がはしばしに感じられるのも魅力です。

    方針

    できるだけ「訳」のつもりで、内容をそのまま漫画化していきます。
    以前、宇治拾遺物語の4コマ「まかふし戯画」を描いたことがあります。しかしこれは「宇治拾遺物語のパロディ」だったので、原典を知らない人は分からない部分が大でした。今回は「訳」を目指します。アレンジはしますが、大意がそのままになるように。※服装や髪型、調度等は適当にします。

    底本

    岩波文庫「宇治拾遺物語(渡辺綱也校訂)」を使います。

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