4コマ宇治拾遺物語

  • 毒龍の巌のこと

    原題「同僧正大嶽の岩いのり失事」。

    前回登場した静観僧正の二本目です。

    「僧ども、命もろくして多く死にけり」のモブ感。よく分からないまま僧が大量に死んで、よく分からない岩のせいだという噂になって、その噂に基づいて祈ったら当たりだったという、何だかふわふわした話です。

    この静観僧正、祈りと黒雲で物事を解決する点は前回と同じなので、何かそういう能力者のような趣があります。すごいけど行き当りばったりな感じも同じ。奥ゆかしいキャラ立ちをしています。

  • 60人で雨乞いすること

    原題「静観僧正祈る雨を法験の事」。

    静観僧正がサクセスする話です。

    60人でやっても駄目ということで、「場所を変えて一人で祈らせてみよう」と帝が思いついて、特に位も高くない静観にやらせたところ、なぜか成功します。どういう理屈なのか全く分かりません。数に頼るより、一人が真剣にやったほうがムーンショットが出やすい……みたいな話なのかもしれません。

    静観は次の話に引き続き登場します。

  • 雑草を食う僧のこと

    原題「清徳聖奇特の事」。

    突っ込みが追い付かない話です。

    最初に食べている草は「水葵」で、水田雑草の一種。本文には「三町ばかりぞ植ゑたりける」とあるので、一応食用に植えてあるようです。とはいえ、普段から食べるような物でもないようです。通常は塩茹でにするらしいですが、聖は折り取って生で食べています。

    三町=300m四方の草を食いつくした後、振る舞われた千合の白米を食いつくし、さらに一万合の白米を食ったようです。い、一万合……?

    その後、通りを汚しまくって帝が名前だけ変えた、というきたない由来話で終わります。普通なら「高徳のあまり路に名を残した」というような話に着地しそうなところです。

    奇妙で珍しいのは間違いないが、猥雑で、全体としてはどう受け取ったものか迷う、宇治拾遺らしいエピソードです。

  • 芋粥(後編)

    原題「利仁芋粥事」。

    「とにかく金持ちは凄い」という話なんですが、金持ちがキツネに食わせるようなものを一生かけても満足に食えない……という格差には、芥川龍之介じゃなくてもモヤッと感じることでしょう。

    一応、粥を振る舞われただけじゃなくて、馬やら衣服やら織物やら貰って一ヶ月ほど過ごして帰ることになるので、「超ラッキーな出来事」なのは間違いないです。

    それもそれでモヤッとしますね。

  • 芋粥(前編)

    原題「利仁芋粥事」。

    芥川龍之介の短編「芋粥」の元ネタです。

    芥川「芋粥」では、芋粥を食べたがる男の冴えなさ・情けなさを強調していますが、原文では割とあっさりです。利仁の態度も紳士的で、尊大さがありません。キツネに命令する下りは急に狂ったように見えますが。

    後半に続きます。

  • 百鬼夜行ワープのこと

    原題「修行者百鬼夜行にあふ事」。

    「異空間では、距離の仕組みが現実と異なる」というSF的なお話。不動明王像と間違えられて、軒下に動かされるシーンを想像するとちょっとかわいい。

    間違えられた理由として、原文では「不動明王の真言を唱えていたから」と説明されています。

  • 菩薩の登場方法

    原題「尼地蔵み奉る事」。

    「信心があれば、経緯を超越して仏が現れる」というのは良いとして、登場の仕方がすごい。原文では「少年が額を掻いたら、頭のてっぺんまで裂けて、中からえもいわれず神々しい地蔵の顔が出現した」となっていて、このまま漫画にしています。

    その後少年がどうなったのか。少年の正体がもともと菩薩だったのか、菩薩が少年に化けて現れただけなのか。母親からはどういう光景に見えたのか。何も分かりません。

    直球の説話のようでいて、怪奇な印象が残るエピソードです。

  • 鮭泥棒の言い訳

    原題「大童子鮭ぬすみたる事」。

    怪人が下品なギャグを飛ばす恒例のパターン。全く言い訳になってないのが潔い。

    現代では、女性器ギャグは男性器ギャグよりタブー度高いですが、宇治拾遺物語に躊躇はありません。

    「大童子」というのは、寺に仕える童子のうち年かさの者をさすようです。稚児と違って可愛らしい存在としては描かれません。この話の大童子は「頭頂部が禿げていて、ショボくれてむさ苦しい、風采の上がらない奴」とひどい言われ様です。

    女言葉は原文にありませんが、オチで自分を女御に喩えているようでもあるので、そう描いてみました。

  • 田舎の風流児のこと

    原題「田舎児桜の散るをみて泣く事」。

    風流に見えて実は作物の心配をしていた稚児と、ドヤ顔でそれっぽいことを喋ってしまった僧。どっちが笑いどころか微妙なところですが、そのまま微妙な感じに描いてみました。

  • 稚児のそら寝

    原題「児のかいもちするに空寝したる事」。

    教科書で見覚えのある方も多いかと思います。宇治拾遺物語をここまで見てきた中では、すごくおとなしい部類だということが分かりますね。

    稚児はエロ可愛い存在なので、一種の萌えエピソードなのかもしれません。

    夜食を作るのは一応ルール違反なので、ナチュラルに破戒してるんだな……という見方もあるかも。

    なお、教科書では「かいもち」を「ぼた餅」と訳していましたが、作るのにかかる手間や所要時間を考えると、モチではなく「そばがき(そば粉に加水して練ったもの)」が正解だそうです。

  • ハッチャケ婿のこと

    原題「小藤太聟におどさる」。

    く、くだらない。「本当にあったエロ笑える話」みたいなノリ。なお原文では勃起しています。その効果音は「けしけし」。

    平安時代の貴族は通い婚なので、夫婦は同居せず、男が女の住処を尋ねてくるのが普通とのことです。そこには義父もいることになるので、こういうトラブル(?)はあるあるなんじゃないかと思います。

    シーツっぽいものを描いていますが、当時ふとんはなく、昼に着ていた衣服をかけて寝ていたようです。

  • セックスの定義のこと

    原題「源大納言雅俊一生不犯に金打せたる事」。

    馬鹿正直にも、公衆の面前で確認する僧。事前に何とかすることは出来なかったのだろうか……。

  • DJ通俊、ディスられること

    原題「秦兼久通俊卿の許に向かひて悪口する事」。

    藤原通俊が「後拾遺和歌集」を編纂した時の話、とされています。自作を披露しに来た男は秦兼久なる人物。歌をけなされて怒り、わざと伝わるように悪口を言う兼久。壮絶な批評戦が始まる……と思いきや、あっさり折れる通俊。

    兼久が面倒臭いヤツなのか、通俊の歌力が実際低いのか、判然としません。

    結局、「後拾遺」にこの歌は入っていないようです。

  • 取り憑き僧正のこと

    原題「宇治殿たをれさせ給て実相房僧正験者に召事」。

    本人が来るまでもなく、守護霊が病気を治してしまうという恐るべき能力。

    原文は守護霊ではなく「護法」とあります。「護法」は「仏教を守るパワーが人に宿ったもの」なので、守護霊みたいなものと考えます。「護法神」「護法童子」などと訳す場合もあるようです。

  • 回りくどい遺産のこと

    原題「易の占金を取出す事」。

    10年越しの予言というだけでなく、無関係の易者に中継させるという迂遠な芸当。全く信用されてない娘がちょっと笑えます。いや、信用というより予知でそう分かってしまうのだから、一層深刻かもしれません。

    お金が入って本当に良かった。しみじみ。

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